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旅とか本とか、そんな記憶

Italy(2):ミラノ2日目

 今日から取材が始まるので、朝食後にK氏の泊まるホテルへ向かう。K氏曰く「居心地がいいけれど、みんなと離れているのはちょっとつまらない」と。「他誌の原稿も持ってきてるんですよね? ゆっくり書けていいじゃないですか」と返しておく。
 取材対象は、ホテルの設計者。ここはもともと修道院で、改築してホテルにしたという歴史がある。当初は外観だけ残す予定だったが、工事中に壁画が残された部分が次々と発掘され、それを残すためにデザインを何度も変更して完成にこぎつけたという。

 印象的だったのは、「イタリア人にとってはアートが生活にとって大切なもの。何を着て、何を食べて、何をするか? それがアートなんだ」っていうこと。美意識を常に持ち、自分の選んだものに自信を持って生活するのがイタリア人のスタイルということを聞き、感銘を受ける。
 取材後はホテルのリストランテで食事。ミラノといえば、ミラノ風カツレツだけど、わたしは海老料理をチョイス。美味しかった。

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取材したホテルの中庭。通訳(イタリア語→英語)の人曰く「ミラノの中心街にあって、こんなピースフルな場所があるのは奇跡だ」。たしかに、都会のホテルに滞在している感じがしなかった。

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 午後は、絵画の修復士の取材へ向かう。イタリアでは家に絵を飾るのは普通のことであり、どんな家にも大なり小なり絵があるという。持ち主がうっかりキズをつけてしまったというものから、時代を経て劣化してしまったというものまで、元の状態に復元するために修復士が活躍している。
 そう聞くと、どんなえらそうな人が出てくるのかなと思っていたら(失礼)、ものすごーく普通ないでたちのおじさまが登場。しかし話はもちろん専門的。納得したのは「修復士は画家ではない」ということ。19世紀までは、“修復=前の状態よりよくする”という認識があり、修復する人がいいように描き変えていたが、今はいかに当時の状態に戻せるかということに重きを置いているという。だから、絵の描き方に精通しているのはもちろんだけど、絵を理解することが大切になるそうだ。

 偉人たちが描いた作品を手掛けることもあり、エキサイティングな仕事で楽しいけれど、不満もあるという。個人所蔵のものだったら復元方法についてとやかく言わないけれど、国をはじめとする公共団体所蔵のものだと、最善だと思う最新技術を使うことが認められないこともあるのだとか。その許可が下りるのを待っている間に、ボロボロになってしまう作品も。「復元するために、伝統と歴史と戦っているんだよ」という言葉が印象的だった。

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 修復士の取材が終われば、今日は取材が終了! 近くのカフェでお茶をして、風景写真を撮りがてらBrera地区へ。この辺りは、東京で言えば青山のような感じ? 表参道というよりも、骨董通り。ブランドショップもあるけれど、趣味のいい雑貨屋さんやセレクトショップ、レストランが並んでお洒落な雰囲気が漂う。ひとりでうろうろしたら楽しいだろうなぁと思いつつ、おじさんたちとぶらぶら散歩。時間がゆっくり流れている感じがして、心地よい。「Il Pontaccio」で太刀魚と野菜のグリルを食べて帰宅。ミラノでの大きな取材は終わり、あとは周辺取材やら撮影だけなので、ひと仕事終えた気分で眠る。